肥料なしでも植物が育つ理由とは?微生物と光合成のチカラ

はじめに
お庭や道端に生えている雑草を見て、「どうして肥料をあげていないのに元気なんだろう?」と不思議に思ったことはありませんか?
実は、その秘密は「光合成」と「微生物」の働きにあります。植物と土の中の微生物は、お互いに助け合って成長しているのです。
本記事では、光合成がどのように植物を支え、さらに微生物との共生がなぜ重要なのかを、わかりやすく解説します。
植物が元気に育つ自然の仕組みを、一緒に学んでいきましょう!
- 肥料を使わずに植物を元気に育てたい方
- 自然にやさしい農法に興味がある方
- 炭素循環農法を取り入れたいと考えている方
- 慣行農法と自然農法の違いを知りたい方
- 野菜をもっと美味しく育てたい方
- 農薬や化学肥料を減らしたいと考えている方
- 作物の栄養価や味を改善したい方
- 病害虫の被害を減らしたい方
光合成と微生物
土手や空き地をを見渡すと、雑草や木々が自生しています。肥料を与えていないのに元気に育っているのは、なぜでしょうか?
答えは、雑草や木々を微生物が助けているからです。実際には植物と土の中の微生物は共生関係にあり、あるものを物々交換しているためです。
少し話がそれますが、植物は「生産者」と呼ばれ、自然の循環に欠かせない存在です。これは植物が「光合成」をおのなえるためです。
光合成とは、太陽の光を浴びている時に、二酸化炭素(CO2)を吸って酸素(O2)を吐き出す活動ですが、実はそれだけではありません。
もう一つ重要なことをおこなっているのです。
それは、三大栄養素の一つ「炭水化物」を生成することです。炭水化物とはエネルギーを発生させる源の栄養素です。
光合成の元素式は以下のようになります。
6CO2+12H2O = C6H12O6+6H2O+6O2
二酸化炭素 6個 + 水 12個 →
炭水化物 + 水 6個 + 酸素 6個
酸素を生成するだけでも素晴らしいのに、炭水化物まで生成してくれる・・・。偉大ですね。
この植物がおこなう光合成。
実は、植物と微生物がおこなう物々交換には密接な関係があります。
微生物の中でも植物と密接な関係にあるのが「糸状菌」です。
糸状菌は好気性といって空気(酸素)と適度な水分を好みます。少し湿った落ち葉の後ろを覗くと見ることができる、白い糸のようなものです。
森の中などの土は、糸状菌が張り巡らされています。
このネットワークを使って土壌に含まれているミネラルやリン等をを植物の根を通じて、幹や葉にに提供してくれるようになります。
植物もその対価として、あるものを提供します。
それは、光合成で生成した「炭水化物(糖質)」です。
これにより物々交換が成立し共生により植物と糸状菌がどんどん育っていくのです。

慣行農法と糸状菌
慣行農法とは、一般的な栽培方法です。
慣行農法では以下のことをおこないます。
- 植え付けた植物以外の植物(雑草)栄養を奪い、光合成を阻害するため抜き取る
- 土に空気を取り込むため土に刃をいれ耕して土を起こす
- 栄養が不足するため、化学肥料や有機肥料を施す。
至って普通の栽培ですが、この栽培方法には糸状菌が登場しません。なぜでしょうか?
実は、今あげた方法を取ると糸状菌は育つことができなくなくなってしまうのです。
植え付けた植物以外の植物(雑草)を抜き取るとどうなるか?
雑草が無くなると共生関係を築くチャンスが少なくなます。
そして、日陰が無くなり、土が丸裸に・・・。土の湿り気が維持できなくなり、雨が降らないと乾燥して糸状菌が住めなくなってしまいます。
土を刃をいれて耕すとどうなるか?
土の中で作り上げた糸状菌にネットワークは破壊され、お日様の下にさらけ出されてしまうと土は乾燥して糸状菌は消えてしまいます。
肥料を与えると土壌はどうなるのか?
植物と糸状菌は共生関係にあると先に述べました。
植物は光合成で生成した炭水化物を、糸状菌は土の中で集めたミネラルやリンを分け合って育っています。
しかし、肥料が土に投入されると植物は苦労せず栄養を吸収できるようになります。
すると、植物は炭水化物を分け与える必要がなくなり、物々交換は終了。
糸状菌も植物と一緒に活動するメリットが無くなり、次第に糸状菌は姿を消してしまいます。
糸状菌を増やすには・・・
糸状菌は、以下の4つの環境が整うことで増殖することができます。
- 空気(酸素)
- 適度な水分
- 炭素資材
- 適温(15℃~40℃)
リストから分かるように糸状菌のエサは、炭素資材です。
細菌類は固い炭素資材は侵入することはできませんが、糸状菌は時間をかけてゆっくりと分解していきます。
糸状菌が増えると、糸状菌を住みかにして他の菌達も増えていきます。
中には、植物の三大栄養素である窒素を、空気中の窒素をから土に固定してくれる菌や、抗生物質を出して、病気を予防する菌までいます。
すごくないですか。
この素晴らしい糸状菌を増やし、炭素を循環させる農法を、「炭素循環農法」と呼びます。
慣行栽培と炭素循環農法のメリット、デメリット
慣行栽培と炭素循環農法のメリットとデメリットを見ていきましょう。
慣行栽培
メリット
農法が確立されている
雑草を抜き、耕して化学肥料や有機肥料を施す。そして植付けをしていく一般的な農法であるため、様々な書籍があり再現性がある。
大量生産できる
土壌の養分は肥料をすき込む量で調整できる。

デメリット
害虫が増える
投入した肥料の影響で、微量のアンモニアなどの腐敗ガスや、エチレンなどの老化ホルモンを植物自体から発してしまい虫を引き寄せてしまう。また、虫に対抗するための抵抗力も低くなる。
これらにより、葉が食害され光合成できる面積が減り、抗酸化物質が十分に作れなくなる。そして、蒸散量が減り水を吸い上げられなくなる。
土の微生物が少ない
土の上が裸になっているため、太陽の光を浴び土が乾燥します。すると、土の中の空間がなくなり次第に空気が少なくなっていきます。微生物が少なくなると、土の中の有機物が分解しきれず腐敗してアンモニアが発生し、害虫を呼び寄せてしまいます。
作付けするたびに耕し、肥料を投入する必要がある
土の中の微生物が乏しいため、畑の養分の分解が進まず、土の中の栄養も偏ってしまいます。土が乾燥して固くなっているため耕して土に空気を入れ、畑の外で発酵した肥料を投入します。肥料は畑の外で作る必要があるため場所も必要ですし、重い肥料を畑まで持っていく労力も必要になります。
野菜の栄養が低く味が落ちる
戦前に栽培していた野菜と比較すると、養分が半分以下になっている野菜が多数あるようです。また、味が落ちます。
自然農法(炭素循環農法)
メリット
野菜が美味しい
ビタミンやミネラル、ファイトケミカルたっぷりで、後に残る苦味、えぐみがほどんどなくなり甘くて風味豊かになります。野菜本来の味が引き立ちます。
また、自然栽培で育てた野菜は腐りにくい特徴があります。腐らず水分だけ抜けて枯れていくのです。
肥料を入れる必要がない
化学肥料や有機肥料、石灰までもが必要ありません。畑の栄養のかじ取りは微生物にまかせます。よって、財布に優しい農法と言えます。
肥料はいれませんが微生物のエサとして、育てた野菜の残骸や雑草を土に入れたり、炭素分が多い資材(落ち葉や木片)を入れることもあります。
作付けのたびに耕す必要がない
微生物が活性化している土は、空気を多く含んでいて、肥料も入れる必要がないため耕す必要がありません。逆に耕すと微生物が死んでしまいます。
虫被害が減る
植物は、細胞壁を厚くして組織を頑丈にし、さらに、虫が分解しにくい香りや抗酸化物質を放出することで自らを守ります。これにより、紫外線や病原菌からのダメージも防ぐことができます。

デメリット
土づくりに手間がかかる
炭素循環農法は、土壌で微生物を育てる発酵型の土づくりになります。
ただし、慣行農法をおこなっている土では肥料が投入されており、栄養素が邪魔して、糸状菌が育ちにくくなります。
そのため、炭素循環農法を行う際に、土壌の過剰な養分を一度抜く必要があります。
雑草処理が大変
土壌の発酵が進むと作物が育ちやすくなるため、雑草も大量に育つようになります。
全て抜き取ると土が乾燥するため、雑草でマルチングしたり、育ちすぎた雑草を刈ります。
雑草でも有用な品種は残す目利きができると土を育てやすくなります。
最後に
植物が元気に育つのは、光合成と微生物が助け合っているからです。
特に、糸状菌が植物の成長を支える大切な役割を果たしていることが分かりましたね。
慣行農法は、肥料を使うことで手軽に栽培できる一方で、土の微生物が減ってしまうデメリットもあります。
一方、炭素循環農法では、自然の仕組みを活かして土を育て、作物本来の美味しさや栄養価を引き出すことができます。
どちらの方法にもメリットとデメリットがありますが、大切なのは、自然の循環を理解し、自分に合った栽培方法を選ぶことです。
ぜひ、土の中の微生物の働きに目を向け、より豊かな土づくりにチャレンジしてみてくださいね。
次回は、慣行農法から炭素循環農法へ移行する方法について記事にしたいと思います。
次回
最後までご覧頂きありがとうございます。
少しでも参考になってもらえると嬉しいです。
参考にした書籍
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消費を変えれば腸も健全化し土壌も地球も再生する。有機農法の可能性と根拠がが18もの文献を元に説明されています。おすすめです。